膵炎 明日はどっちだ

慢性膵炎と膵臓癌の関係 

日比谷野音の感傷に浸っていましたが、少し今月の記事の予定を、

1.慢性膵炎と膵臓癌の関係 

慢性膵炎の治療は、症状の再燃を予防するための禁酒や脂肪摂取量の抑制といった生活指導と、蛋白分解酵素阻害薬のカモスタットメシル酸塩(商品名:フォイパン)、PPI薬(商品名:パリエットなど)、消化酵素剤、去痰薬(商品名:ビソルボン)の処方が中心です。
薬の処方だけで、長年、経過観察されているケースが多いのですが、大阪府立成人病センター消化器検診科主任部長(胆膵腫瘍内科)の中泉明彦氏は、慢性膵炎を診断した場合、常に膵癌発症の可能性も考慮して、定期的な画像検査を実施すべきだと述べられています。

2005年に発表された厚生労働省の調査(主任研究者:産業医大消化器・代謝内科教授〔当時〕の大槻眞氏)で、膵石が見付かるなどして慢性膵炎と確定診断された患者1656例を8年間にわたって前向きに追跡したところ、慢性膵炎の患者は一般集団に比べて膵癌による死亡率が7.84倍も高いという結果がでています。確定診断までには至っていなくても、“膵炎様症状”を呈した患者には注意を払うことが重要だと指摘されています。それは、上腹部痛や血清膵酵素の上昇などの膵炎様症状が出現した後、いったん沈静化するものの、しばらくすると膵臓癌が見付かったというケースが見られるからです。

これらは、慢性膵炎に限らず、急性膵炎の場合も同じで、急性膵炎との診断で治療退院後、半年ほどで膵炎様症状を訴えて精密検査をしてみると、膵がんが発見されたというケースも身近で何件かありました。

前出の中泉氏は、「膵炎様の症状は、腫瘍マーカーよりも早く表れる膵癌のサインと考えられる。従って、膵炎様の症状が出たときに、腹部超音波、磁気共鳴胆管膵管撮影(MRCP)、造影CTなどの画像検査を行えば、癌の早期発見につながる可能性がある」とは話されています。

大阪府立成人病センターでは膵検診を3〜6ヶ月のスパンで行っておられますが、この膵検診のもようも含めて、膵炎と膵癌について書いて見たいと思います。

2.機能性胃腸炎(FD)と慢性膵炎


関西労災病院消化器内科部長の伊藤敏文氏によれば、「患者が上腹部痛や腰背部痛を訴えているが原因が特定できない場合に、血清アミラーゼの高値だけで慢性膵炎と鑑別しているケースが少なくない」また、逆に「本当は慢性膵炎なのにFDと診断されているケースがかなりあるのではないか」と話されています。この点については、以前にも書きましたが、慢性膵炎は、症状が不定期に出現する。さらに、画像診断で膵石や明らかな石灰化が確認できない軽症例の診断基準が明確でない。診断が難しいことが逆に、診断が付かない場合に付ける「便利な疾患名」として使われやすい要因にもなっているようだ。と話されています。

関西労災病院のデータによれば、「血清アミラーゼの値のみで検査している場合、正常値が出たら『膵炎ではないだろう』と考えて、本当は慢性膵炎なのにFDと診断されているケースがかなりあるのではないか」とのことです。これについては、以前の機能性胃腸炎の記事とまとめて再掲したいと思っています。

3.高アミラーゼ血症の鑑別方法


血液検査でアミラーゼが高い=膵炎ではないので、コレだけで膵炎と診断される病院はありませんが、それではアミラーゼが高い疾患とはどのようなものがあるのでしょうか。
やせている人は、通常より20%ほど高値になるのですが、他にも慢性・急性膵炎、膵ガン、膵のう胞、耳下腺炎、腹膜炎、マクロアミラーゼ血症、腎不全、唾液型アミラーゼ血症などで高値を示します。これらの疾患との鑑別方法について書いて見たいと思います。

4.腹部膨満感

急性膵炎、慢性膵炎ともに良く現れる症状の一つで、薬などではなかなか治まりません。
私の場合は激痛の前兆としてこれがやってきます。この前兆の膨満感と膵炎が増悪してからの膨満感は微妙に違います。
前兆としてやってくる膨満感は鳩尾、心窩部(しんかぶ)を中心に独特のものです。強い吐き気も伴いますから、コレがやってくるといそいそと入院セットを再確認しながら絶飲・絶食に入ります。
増悪期絶頂の頃は膨満感も吹っ飛ぶ痛さなので、気になることはありませんが、痛みが和らいでくると腹部全体に張りが残っています。
膵炎の膨満感については以前に書きましたので、その他のケースも書いてみたいと思います。
腹部膨満感はお腹が膨れる感じのことで、膵炎の場合は感じだけではなく見た目や触った感じでも明らかに張ってます。何も食べてないのに、お腹が張った感じが続いたり、お腹が張って食事ができない様な状態をいいます。食べ過ぎてお腹が張るのは、当たり前なので取り上げません。(笑)

5.コメディカルスタッフ (comedical staff)

医師・看護師以外の医療従事者。薬剤師・歯科衛生士・理学療法士・作業療法士などを指します。
私の入院している病院は急性期病院ですので、長期入院でリハビリといったケースは殆どありません。脳梗塞などでのリハビリも、癌で手術後のリハビリも可能な限り早い段階で始まります。
どうやらリハビリは早く始めるほど効果が高いと言うエビデンスがあるのでしょうか、消化器疾患の方でも術後ICUから帰ってこられるとコメディカルの方と一緒に運動を始めています。

栄養士の方などは膵臓病の患者にとって薬剤師の方々とともにもっとも身近なコメディカルではないでしょうか、このコメディカルの方々についても書いて見たいと思います。

6.その他、医療の質や改訂案がでている膵臓病のガイドラインなどについても書いています。
[ 2008/09/11 18:34 ] 膵炎 慢性膵炎 | TB(0) | CM(6)

膵炎診断基準改定 

みなさんもご存知だと思いますが、膵炎の診断基準が改定されました。
まずは、直近10月1日から適用される、重症急性膵炎の基準です。

1.急性膵炎の診断基準

1.上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある

2.血中、尿中に膵酵素の上昇がある

3.超音波、CT、MRIで膵に急性膵炎に伴う異常所見がある


上記3項目中2項目を満たし、他の膵疾患及び急性腹症を除外したものを急性膵炎とする。ただし、慢性膵炎の急性増悪は急性膵炎とする。
膵酵素は膵特異性の高いもの(膵アミラーゼ、リパーゼ)を測定することが望ましい。

この項目で、膵酵素は膵特異性の高いもの(膵アミラーゼ、リパーゼ)を測定することが望ましい。が追加され、以前は画像とだけしるしてあったものが、超音波、CT、MRIと明記されました。

2.重症度判定基準

A.予後因子

1. Base excess ≦ -3mEg/1 またはショック(収縮期血圧80mmHg)

2. PaO2 ≦ 60mmHG (room air) または呼吸不全(人工呼吸器を必要とするもの)

3. BUN ≧ 40mg/dl (もしくはCr ≧ 2mg/dl) または乏尿(輸液後も 400ml/1日以下)

4. LDHが基準値の2倍以上

5. 血小板数 ≦ 10万/mm3

6. 総Ca値 ≦ 7.5mg/dl

7. CRP ≧ 15mg/dl

8. SIRS診断基準による陽性項目数 ≧ 3

SIRS 診断基準項目:

 体温>38℃または<36℃

 脈拍>90回/分

 呼吸数20回/分 またはPaO2 ≦ 32mmHG

 白血球数>12000/mm3 もしくは<4000/mm3 または10%超の幼若球の出現

9. 年齢 ≧ 70歳

B.造影CT Grade

原則として発症後48時間以内に測定することとし、炎症の膵外進展度と、膵の造影不良域のスコアが、合計1点以下をGrade1、2点をGrade2、3点以上をGrade3とする。

 1.炎症の膵外進展度

  前腎傍腔:0点
  結腸間膜根部:1点
  腎下極以遠:2点

 2.膵の造影不良域

  膵を便宜的に3つの区域(膵頭・膵体・膵尾部)にわけ、

  各区域に限局、または膵周辺のみの場合:0点
  2つの区域にかかる場合           :1点
  2つの区域全体をしめる、またはそれ以上:2点

C.予後因子が3点以上またはCT Grade 2以上のものを重症とする


以前の診断基準からすると、判定基準がすっきりして客観的な診断基準となっているようです。
[ 2008/08/27 13:22 ] 膵炎 慢性膵炎 | TB(0) | CM(2)
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